【制作意図および技法に関するメモ 長谷川直人記】
制作の過程は一般的な陶磁のそれとは異なり、土で型をひねり、石炭灰などを中に満たし焼成したあと、型を削り、中に「生成」したものを取り出す。
まず、焼成後切削しやすくするため、耐火粘土にアルミナ等を添加し耐火度をさらに上げたものを使用して、手びねりにより型を成形する。この際、添加したアルミナなどにより粘土の可塑性と粘性がかなり低下しているため、外側に通常の耐火粘土をかさねて成形していく場合もある。
型の乾燥後、内面に離型を助けるためのアルミナと、作品表面の表情を形成する粘土の薄い層などをほどこしその後石炭灰を主成分とする数種類の釉薬粉体を充填し焼成する。焼成はごく一般的な1240度の酸化焼成であるが、石炭灰のなかに含まれる多用な不純物の効果で発泡し、型のなかは大小さまざまな気泡により構成されたカルメラ焼きのような状態になる。窯出し後に耐火粘土の型からなかの作品を慎重に削りだし、最後に表面を研磨して表情を調整していく。(全体が厚さ1mm前後のごく薄い気泡の集合であるため衝撃に弱く、小型の精密な電動工具で少しづつ削る)
この一連の作品の形態は特に何かの形をイメージしたものではなく、技法上の理由もあるが、実際の形を見ることなくおもに感触をたよりにして、鋳型をつまりネガティブな空間を手びねりで成形するなかで、できるだけ自然に自分の内から出てくる何ものかの形をそのままとどめることに努めたものである。また、最終段階で焼成によりはじめて実体としての形が生成し、それを土型から掘り出すという工程は、さながら未知の化石を発掘するような感があり、そこではじめて出会った形態との対話をしながら最終的な研削作業を行いその表情の決定をしていくこととなる。
Naoto Hasegawa
1958 京都生まれ
1985 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
1985 個展-ギャラリーマロニエ(京都)
1988 個展-ギャラリーいそがや(東京)
1991 個展-GREEN COLLECTIONS MULTIPLE(東京)
1995 個展-ギャラリーTAO
1996 交感する陶芸(愛知県陶磁資料館)
1997 美の予感展(高島屋)
1998 作り手たちの現像展(滋賀県立陶芸の森)
1999 個展-ギャラリー器館(京都)
2001 個展-アートスペース虹(京都)
2002 個展-ギャルリプス(東京)
2004 個展-ギャラリー目黒陶芸館(三重)
現在 京都市立芸術大学奉職