最近この消息文もそろそろネタ切れなので、かといって風流韻事を草するようなガラでもなく、また文章はウソなりとはいえ、なにか本当にいいたいことを書くべきだと思ってもおり、しかし本当にいいたいことなどそんなにあるはずもなく、そんなこんなで手前で勝手に困っている。それならやめりゃいいのである。展覧会の案内状なのだからもっと作家と作品のことを書けよといわれたりもする。ごもっとも至極である。やめられないのはこの作文が消息文のようなもので、だれかに宛てて書いているような気分があり、実際ご贔屓先とか作家の人の顔がポツポツ浮かんできたりして、それにまだ当方、どっこい生きてますよ、まだ商売を続けています、動いてますといった発信というか明滅する信号のようなものに長年のあいだになってしまっているということがある。また、作家と作品のことは、アクチュアリテすぎてなかなか書けないのである。書かせてもらうこともあるが、そんなに人作品ともに惚れ込むような作家がいく人もたくさんいるはずもない。それなら死んだ人も勘定に入れねばならなくなる。個展をお願いする以上、作品あるいはその人を知って認めてのことなのだが、そして好きなのだが、しかしそこまでのことということがある。個展をお願いしておいてキチガイじゃあるまいし批評がましいことは書けないし、中途半端に心にもないお世辞をいってはだれかの歯が浮いてしまうのではないかと恐れたりする。なにより自らにその資格があるのかという恐れもある。学芸員とか美術館員ともなれば次々と作家作品の評を書かねばならないだろうが、彼らはプロだから仕方がない。しかしよく書けるなあと時に思ったりする。なかには本気か?と思わせる作文もある。筆者はプロではない。素人だと思っている。素人だからいえることがある。ここにおいて裸の王様がいたら指差してみたく思っている。
お話し戻って、先ほどのネタ切れの困惑から、近頃は作家本人になにか書いて送ってほしいと頼んだりしている。身辺雑記でも制作上の雑感でもいい。あるいはもっと切実な内容のものでもよい。そのほうが読んでみたい気がする。当人の書いたものはまた格別なのである。しかしたいてい断られる。さもありなんと思う。述べて作らずではないが作って述べずといったところか。第一面倒くさかろう。悩ましてしまい悪かったと思うことがある。そもそも芸術の人であるほど、創作の秘密はプライベートの極みに属することであり、いわくいいがたいものがあろう。書けといわれて書けるものではない。書けたらそれは別種の才能である。わかってはいるが、身辺雑記的なものというより、興味のある作者の、いわば神との内緒ごとめいた部分のところを、書いたもので垣間見てみたいと思うのである。見物の欲目である。
-いつもお世話になっています。種子島も西風がかなり強く吹き、寒さを感じています。先月のDM用の文章の件ですが、作陶する時には、自分の好き嫌いで、無心にはならず、一つ一つに自意識を持ちながら作り上げています。焼き上げた物には、言葉はいらず、執着心もありません。私の焼物にはむずかしい言葉は不要です。何の哲学も持たない私ですので。又、個展時は、織部が多くなると思います。後一ヶ月、一生懸命頑張りますのでよろしくお願い致します-。
今展、池田省吾の文字どおりの消息である。種子島よろしく薫風颯爽たるさわやかさを覚える。この人にも頼んでしまったのだが、池田さん、先月来よりお煩わせいたしどうもすみませんでした。
葎
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いま熱く衆目を集めている池田省吾氏の、京都での初個展でございます。さていかなるヴァラエティーにて出してくださるか、何卒のご清鑑をお願い申上げます。
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SHOGO IKEDA
1976 鹿児島県生まれ
1996 日本デザイナー学院卒
1998 鹿児島県工業技術センター陶芸部卒
1999 有田窯業大学卒
1999 波佐見川添貞秀氏に師事
1999 鹿児島陶芸展 入選
2000 現代茶陶展TOKI織部 銀賞
2000 鹿児島陶芸展創作テーマ部門 入選
2001 鹿児島 鳳山にて個展
2001 織部の心作陶展 入選
2001 鹿児島 二宮橋画廊にて個展
2002 佐賀 有田松永陶苑にて個展
2002 織部の心作陶展TOKI織部 銅賞
2003 大阪 南地にて個展
2003 佐賀 有田松永陶苑にて個展
2003 滋賀 龍泉庵にて個展
2004 織部の心作陶展 入選
2004 奈良 今西家書院(重文)にて個展
2005 福岡 ギャラリー風にて個展
2006 鹿児島 泥sにて個展
2006 鹿児島 キャパルポギャラリーにて個展
2007 鹿児島 エアポートギャラリーにて個展
2008 東京 穴窯陶廊炎色野にて個展
2009 東京 同個展
2010 東京 陶彩
2010 兵庫 ギャラリー枯淡
2010 岐阜 画廊文錦堂
2012 京都 ギャラリー器館