R.KOIE ANTHOLOGY展
(鯉江良二尤品選)
先年、鯉江良二の人と作品につき、総合的なる解題をものしようとして、なかなか書けるものではないと思い知り、それなら思いつくがままに、かの人への讃のようなものを詠ってやろうということにして書いたのが、以下の駄文であります。ひとつ歌をずっと歌い続けているドサ回りの歌手がいますが、またかと思われても、心を込めて歌えば、同情深くして聞いてくれる人もいるのではと、畏れながらここでも繰り返し、以下ご寛恕のほどを。
先生の作品につきましては言をロウせばくちびる寒し/先生は火の玉の人パトスの人/内燃機関のごとき先生の動力はいかに調達されるか/ガイシュウ一触、火のあがる揮発性の燃料とは、先生の体力ギリギリの脳ミソのなかにあり/肉体が脳ミソと競争してドキドキさせられる/三日ごとに先生は斃れ蘇生するとの由。
現代の表現表現表現…どうシェアすればいいの/頭でっかち装う難解/新風でもなし不易でもなし/他者不在の孤独な自涜的自己表現/恥ずかしいではないか/なんなら今ここで死んで見せましょうかとて/先生土に還るおのれを見せつける/あれにはその他大勢ミもフタもなし/もともと先生常滑のワーキングクラスの出自/真正のワーキングクラスはインテリをバカにしたり。
春秋に義戦なし/機械あればかならず機事あり/ヒッキョウの原子爆弾/できたものは昔に返らず/とはいえ先生哀しき甲斐なき怒りを怒ってみせる/一大事とはこのこともってほかなしと/しきりに無コを殺傷することたまりませんと直截なり。
先生は作る/作って作りまくります/尺度と問わばこの世にはないようで/今様の茶は敬して遠ざけつ、その精神とはジッコンのご様子/先生どうも中世から桃山に焦がれ侘ぶるようで/そこに混じる縄文の血といいますか/一万年の荒ぶるDNA押さえがたし。
先生は火の玉小僧/根性丸出し顔面蒼白/当るを幸い突進します/土に突貫、泥中を走る/さてはこの世に新しきモノなしとはいえ/先生は先生に連なるものを彷彿させんとす/根底で一体であること/そこ一点から発し止揚をなさん/はたまたもっとも肉迫しても残るは紙一重/詮なしと、先生は彷古に走るはずもなし。
シカして先生は先生を引っ提げ、歴史に推参するか/その器量ありやなしや/人はかの人に天ピンありと指さしますが/この文化果つるときいかんせん/勝手に作ってわれ知る者にゆだぬべき/カラ元気は男子の本懐/わが身中の火の玉冷え凝るまでごロウじあれと先生はいっているようで/ヒヤヒヤと遠くに拝察するのです/かの人は心身自由にあらんとして/この世では生きるに難きステキ滅法な生き方をしている人なのです/
草々頓首、祈念ご本復。
葎